8月6日(日)、新篠津つちから農場さんで「土と食卓 ‐玉ねぎパーティー編」を開催しました。
私がこれまで実施してきた食と農のオンラインイベント「わたしたちと、食料システムサミット」の第4弾、そしてbokashiの「食べるわたしたち」のコラボレーションとして企画した今回。
実際に生産者さんのもとへ行き、土や風に触れ、リアルな対話を重ねることで体にしみこむような理解と歩み寄りが生まれたらと願って、開催に至りました。
収穫&草取り体験+BBQ+対話の場の本企画、ずっと雨予報が出ていましたが、当日は何とか雨に降られずに済み!
最後は玉ねぎ畑を眺めながらこれからのありたい食と農の姿について、20名の参加者みんなで想いや考えを交わし合いました。
(どんな意見が出たかは「4.キートーク&対話」をご覧ください。)
1.まずは主旨説明と自己紹介
お子さんから大学生、社会人、道外から来てくださった方や、地域おこし協力隊の方など様々な方にご参加いただきました!
とうきび収穫に向かうにあたり、中村さんから「良いとうきびの見分け方」をレクチャーいただきます。
中:「上までつぶつぶなのがいいとうきびだよ!」
みんな:「え、わからない…」
でも実際にたくさん触っているとだんだんわかるようになるから不思議。
2.収穫体験
農場に出発。とうきびをもぎます!
緑肥(茎や葉を土にすき込む)目的で育てたとうきびがとんでもなくおいしくて、今は札幌の一部の小売店に卸しているそうです。
カエルもいまして。
雨上がりで土がぬかるみ、靴もこんな。(みなさんには靴の替えを持参いただきました。)
次に玉ねぎ収穫作業。中村さんから作業方法を教わって、
ひとつひとつ手作業で、丁寧に収穫しました。
水たまりで靴の泥を落としながら戻ります。童心に返る…。
とうきびの端っこを切る作業も。売っているものは、出荷前にこうやってひとつひとつ手作業をしてくださっているんですね。
雨が降ってしまったので、残念ながら草取りはできませんでしたが、農家さんの仕事を少し垣間見させていただきました。
3.BBQ
心地よい疲れを感じつつ、いよいよ楽しみにしていたBBQ。中村さんと、中村さんのところに研修に来ている短大生ふたり、職員の方が場を用意してくださいました…!ありがとうございます。
そしてとうきびが…玉ねぎが…甘い!ジューシー!なにこれ!表現が稚拙で申し訳ないのですが、とにかくおいしかったです…!
中村さんが用意してくださったシカ肉やクマ肉もいただきました。クマ肉をBBQで食べたのは初めて。さっぱりしていておいしかったです。
おいしい食材を前に会話もはずみ、大満足なBBQ。
4.キートーク&対話
お腹もいっぱいになったところでここからが本題!
中村さんからは、新篠津つちから農場と、KeepAについてお話してもらい、そのあと参加者全員と対話を進めていきました。
中村さんからのキートーク
新篠津つちから農場では現在20haの土地で有機栽培・特別栽培で玉ねぎを育てています。
中村さんは、「農業がそもそもは自然からの搾取であり、不自然なこと」という前提に立ち、例えば土の有用菌だけ増やすのではなく、有害菌も含め、自然のあり方に近い環境を整えることを意識しています。土づくりは、近隣農家から分けてもらった稲わらや鶏ふんなどを発酵させた自家製堆肥を使い、有機物の補給としては、魚かす・米ぬか・もみがらなどを乳酸発酵させた自家製ボカシ肥料を使っています。
土が健康であれば玉ねぎは自分の力で育つ。玉ねぎは土の力に育ててもらう。そんなことを意識されています。
そんな中村さんが、新たに「KeepA」というバリューチェーンブランドと仕組みを立ち上げました。生産者が安全・安心な作物を安定的に生産するにあたり、かかったコストは適正に上乗せしていく。ごく当たり前のことですが、これまでは実はそれができず、生産者側がコストをかぶらざるをえない慣習がありました。
「食べ物は安くて当たり前」、それでは生産者がもたない、ひいては食の未来が危ない。そこで中村さんは、流通大手や小売店とタッグを組んで、このKeepAを始めたのでした。
一方、消費者側にも実は無力感が漂っていると私は思っていて、例えば何か生産者を支えることがしたい/エシカルな選択がしたいと思っても、そういう店を調べたり探したり、実際に行く時間の捻出もなかなか難しい中で、結局いつものスーパーに並ぶ商品を、いわば受け身の形で買うほか無い、という状態にもなっている部分があると思います。
中村さんは、消費者の方から「KeepA商品をこのスーパーでも取り扱ってほしい」という要望が出てくれればうれしいと言っていました。例えばスーパーの「お客様の声」で一筆書くなど、それは比較的消費者も動きやすいこと。そしてKeepA商品を買うだけでも、もちろん生産者を支えることにつながります。中村さんが、消費者側がアクションを起こしやすい環境を作ってくれたとも言えます。
対話
中村さんからのキートークを聞いたあと、解像度を少し上げるための質問をしつつ参加者全員で対話とリフレクション(振り返り)を行いました。
対話とリフレクションの一部をご紹介します。
○KeepAの取り組みをどう広げていくか
→アイドル人気は、それを支えるオタクたちの動きがとても重要なので(この例えがわかりやすかった)、プレイヤーだけでなくフォロワーが盛りあげていくことが大切。
○有機野菜とKeepA商品の違いは、消費者にとってどう目に映るのか。(どう差別化されているのか)
→有機野菜を買う人と有機農家の関係性は割と閉じていて、一部のコアユーザーによって支えられており、言ってみれば市場が閉じている。一般のスーパーに野菜売り場に普通に並ぶKeepAは、慣行栽培(一般的な作り方)と有機栽培との間に位置するような存在を意図している。
○消費者からしたら、「おいしければいい」と考える人も多い
→自分の関心事でなければ思考停止してしまう。自分の座標軸から出ないとわかりあえない。それってどうしたらいいんだろう。
○消費側の要望に寄り添いすぎないことが大事
→顧客満足度や調査も大切だが、提供側ががどうしたいのかも大切。
bokashiのあおいさんが、レコーディングしてくれました。拡大してどうぞご覧ください!
私たちは何ができるか
中村さんは、生産者の立場に閉じることなく、KeepAの創設を通じて消費のあり方にまで歩み寄って来てくれています。
それに対し、私たち消費者は何をしていくのか。これからもずっとおいしいごはんを食べ続けるためには、私たちもの自分の立場に閉じることなく歩み寄りが必要です。
そしてこの、「立場に閉じない」「すき間や溝を埋める」というのが今回の対話で可視化された重要なテーマだったと感じます。
中村さんが歩み寄って来てくれているように、そしてこのイベントに快く賛同し協力してくれたように、
KeepA商品が有機と慣行のすき間を埋める存在であるように、
アイドルの人気を押し上げているのがフォロワーの力であるように。
私もこうした場づくりを通じてこれまで会うことも話すこともなかった人をつないだり、
コーワキングスペースbokashiも境界線を「ぼかす」ための場であったりします。
社会が複雑化し、白黒はっきりつけられないことが多くなっています。縦割りでは解決できないことの多さはどの組織でも痛感していることでしょう。
自分の専門分野を決めてそれしかやらないのは楽ちんですが、でももうそれだけではまわりません。グラデーションのなかで臨機応変な解釈・判断・コミットが必要になっています。それはストレスフルかもしれませんが、だからこそ新しい考えや発見に彩りをもらえるものと思います。
とはいえ自分の生活を顧みても、忙しいことを理由に無関心になり、対話で出た「自分の座標軸から出ない」こともたくさんあります。
世の中すべての事象に関心を持ち行動を起こすことは絶対に無理ですが、例えば私は、食や農の分野に関心をもってくれた人に対していつでも門戸を開き、簡単にコミットしてもらえるようなことがしたい。そういうことが様々な分野で広がり、簡単に関われるようになることで、少しずつ社会は良くなるのでは、と思っています。
人間と社会への期待
自然の前に非常に謙虚な臨む中村さんが、消費者の行動様式を変えていくような(ゴリゴリマーケティング系の)KeepAを作ったのはなんでだろう?と考えていました。中村さんの中に両方の考えが共存していることに何だか不思議な思いがしたのです。
しばらく考えて思い至ったのは、自然は人間がコントロールできるはずもないものですが、人間の社会は私たちの意思でどのようにでも良くしていけるという、中村さんの人間と社会への期待・責任なのかなと思いました。私も、人間と社会に期待をもつひとりとして、悩み行動し続けたいと思います。
(これが合っているかどうかは、次に中村さんに会った時に聞いてみたいと思います。)
▲自家製ボカシ肥料と中村さん
これからも続くよ「土と食卓」
「土と食卓」はシリーズで考えています。
今回の結果をふまえて、企画をしていきたいと思いますのでどうぞご期待ください。
直近のイベント
9月16日(土)無印良品札幌パルコ店で、食と農のトーク&対話イベントを行います!
おやつとお茶をいただきながらのゆるりとした会になりますので、ぜひお気軽にお越しください。
お申し込み・詳細:https://www.muji.com/jp/ja/event/event_detail/?selectEventId=7491