3月19日、学生から70代までの約30名にご一緒いただき、オンラインでのイベント「わたしたちと、食料システムサミットvol.2 ~担い手それぞれの視点から考える~」を実施しました。
北は羽幌町から南は東京、東は帯広、西は北京からお集まりいただき、多様な視点の行き交う時間となりました。
イベントのねらい
環境によい選択がしたいと思っても、何をどうすれば、どれだけ「結果」に結びつくのか、私たちの社会では見えづらいのが実情です。
たとえばフードロスを減らそうと、まとめ買いしてラップで小分けにして冷凍すること。フードロス削減の代わりにプラごみや解凍のための新たな環境コストが発生しています。
ペットボトルごみを減らそうとマイボトルを持ち歩くこと。でもマイボトルの製造や維持、廃棄にかかる環境コストはどれくらいなのか、私たちにはなかなか見えません。
CO2を数値化して見るための「LCA」というしくみがありますが、これは主に企業向けで、消費者が気軽に利用できるわけではありません。
でも、私たちが行動の判断材料として利用する「知識や情報」はとても断片的なわけです。自分の立場(私であれば消費者)の視点は理解できるけれど、他の立場、例えば生産者、物流業者、製造業者、加工業者、小売店の状況は実はほとんど知らない、ということが多いのではないでしょうか。
現状知りえている少ない知識や情報から自分の行動を選択するのではなく、もっと情報量を増やしたうえで自分の行動を決めていくことが、私たちにできることのひとつだと思います。
「食のサプライチェーンにおけるSDGsの実情を知る」ことを目的として今回のイベントが企画されました。
▼募集ページ
参考:第1回目の「わたしたちと、食料システムサミット」2021年9月23日開催
食のSDGsの課題解決のためには、生産から消費・廃棄に至る「食料システム」全体で問題をとらえていく必要性がある、ということをみんなで学びました。その時に出た意見やアンケート回答をもとに、今回の第2回目が企画されています。
実施したこと
(1)【知る(=インプット):パネルディスカッション】
現状をもっと知るために、今回生産者さん、メーカー・小売りの方、物流業者さんに登壇いただき、下記についてご紹介いただきました。
・それぞれの立場で日々どんなことをしているか
・SDGsに向けた取り組み
・それを実施するうえでの葛藤やもやもや、壁として感じていること
その後、私から話の深掘りを行いました。
■パネリストの方
・Ambitious Farm(株) 柏村知世さん
・馬追百瀬農園 百瀬雪絵さん
・(株)良品計画 鈴木恵一さん
・北海道コカ・コーラボトリング(株) 三浦世子さん
(2)【対話する(=アウトプット):対話の時間】
①パネリストからお話を聞き、感じたこと、ふだんかかえているもやもや、話してみたくなったことを参加者同士でざっくばらんに対話できる時間を設けました。
一般的なイベントでは「聞くだけ」であることが多いと思うのですが、聞くことで生まれた自分の発見やわくわく、もやもやを誰かとすぐシェアできることで、自分の腹落ち、「自分だけじゃなかった」という安心、「そうとらえているのか!」というさらなる発見につながります。
②さらに、パネリストごとにブレクアウトルームをつくり、パネリストとの対話の時間も設けました。パネリストの方への直接の質問、逆にパネリストも聞いてみたかったこと、そうした双方向の場をつくることで、より理解・腹落ち・行動してみたくなるわくわくが醸成されることをめざしました。
(3)【まとめ】
参加者の方にはチャットに感想を書き出していただきました。
パネリストの方からひと言ずつ、そして山中先生にしめていただきました。
(4)【放課後タイム】
終了後のおしゃべり時間として、全体を振り返りながらまったり余韻を楽しみました。
みなさんの感想より
○野菜の「規格」?
北京に住む方から「規格外野菜という概念のあることが不思議」という発言があり、
場がざわつきました。
物流や効率を考えると規格があった方が便利だったわけですが、
日本ほど規格がしっかり行きわたっている国はなく、他国は「規格を守れず規格を設けることをあきらめた」のだそうです。
よって海外では規格が無いために規格外野菜も生まれない、という固定概念をぐるんとひっくり返されたような、そんな瞬間でした。
規格やルールにとらわれすぎず、社会がもっと寛容になる道はないか、子どもたちが生きる社会はそうであってほしい、という声がありました。
○対話の時間
「対話の時間がとても楽しかった」という感想をたくさんいただきました。
「食のSDGs」というひとつのテーマにそって、はじめて顔を合わせる人同士で対話をし思いにふれ合ったわけですが、
そういう「本音」や「思い」を知ることはふだんの関係性や会話ではなかなか難しいことです。
むしろ一定の距離感のある「ほどよい他人」だからこそ、所属や立場関係なく、また臆面なく話せることもあるのだと思います。
思いに共感したり、多様な考えにふれて驚いたり、きっとそれは人間が根源的にもっている欲求に近いものがあるのでは、と感じました。
○充実した時間、次回への期待
「またすぐ次があればいいのに、と待ち遠しいです」という感想には、うるっときました。
「時間が足りない、と思えることがすごかった」という、私の時間配分ミスをフォローしつつほめてくださるウルトラCなご感想も。
私の感想
私のもやもやに、「どれどれ」と興味をもって一緒の視点で関わってくださった参加者のみなさんの存在が、とても心強く、またかけがえのないものと感じました。
本当にありがとうございます。
そして対話の威力と可能性を感じました。「話すことで当事者になる」とパネリストの百瀬さんから教わりました。(確かに、だまったままの会議よりも発言した会議の方がずっと自分ゴトになります。)
対話は、コトを起こすためのきっかけに過ぎないし、解決策にはなりえないのだけど、人と人を結びつけられる強力なツールであることはまちがいないという確信に近い実感を得ました。
(「料理」もそうなのです、知らない人同士でも一緒に料理をすることで、ぐっと距離が近づきます。)
イベントのもうひとつのねらい
「一緒にアクションを起こすコミュニティをつくること」でした。
一人の人間ができることはほんのちょっぴりだけど、一緒に悩んだりかかわったりしてくれる仲間がいることで、勇気をもって一歩を踏み出すことができます。
そしてそこに集う人は、「ただイベントに参加した人」ではなく「イベントに参加したことで新しいもやもやを抱えた人」であってほしいなという思いもありました。
理不尽さや納得のいかなさ、そういうもやもやを心にためて、それがあふれた時、きっと人は一歩を踏み出すのだと思います。今回、たくさんのもやもやを抱えていただいたのでは、と思っています。
現在参加者向けのクローズドのFacebookグループを開設しています。今後情報のやりとりができるよう、プラットフォーム化していきたいと思っています。
お礼
ご参加いただいたみなさん、本当にありがとうございました。2時間の予定がなんと3時間半近くに及びましたが、どなたもドロップアウトなさらず最後までお付き合いいただいたこと、驚きと申し訳なさと、感謝の気持ちでいっぱいです。
山中先生には、第1回目の食料システムサミットの時から、わかりやすいSDGsの説明からZoomの裏方作業、BGM担当、チャット対応など全部をご担当いただきました。「教授の無駄遣い」だと大変恐縮しています。
山中先生がこうしておもしろがって付き合ってくださること、感謝しています。ポツンとひとり始めたフロンティアを孤独にさせず、まわりが盛りあげてあげることが、何かムーブメントを起こすのに必要なことだとTedで見ました。私も誰かを応援できるそんな人になっていこうと思います。
ぐっちゃんにはグラフィックレコーディングに入っていただきました。盛りだくさんな内容で、私ですら迷子になりそうな話を可視化してくださいました。ぐっちゃんが途中ハーベストしてくださったおかげで、ご参加のみなさんも頭をいったん整理して対話の時間へと突入できたことと思います。
こちらでグラレコを共有します。ぜひ拡大して見ていただければと思います。
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北海道新聞(3月22日夕刊)
今回の実施模様についてご掲載いただきました。
北海道大学のHP
今後またこうした場を設けていく予定です。
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